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No.52026/10/30#歴史

バイブ誕生の「ヒステリー治療」伝説は、証拠ゼロだった

「バイブは昔の医者がヒステリー治療のために発明した」。有名なこの話、確かめてみると証拠が見つからない。本当の歴史は、痛みをやわらげる器具と「健康家電」だった。

舞姫華さんっ! バイブってさ、昔のお医者さんが「ヒステリー」を治すために発明したんでしょ!? 映画にもなってたじゃん! ボク知ってるもんっ!

姫華……はぁ。アンタ、それは一番有名な「証拠のない話」よ。出どころは1999年の歴史の本『The Technology of Orgasm』。ヴィクトリア朝の医者が、女性患者を絶頂させてヒステリーを治療してた、っていう説ね。お芝居にも、2011年のイギリス映画『Hysteria』にもなったわ。

姫華でも2018年、歴史家のハリー・リーバーマンとエリック・シャッツバーグが、その本が挙げた資料を一つずつ確かめたの。結果は、医者が電動バイブで女性患者を絶頂させる治療をしていた証拠は、一つも見つからなかった。

舞えーっ!? じゃあ発明したグランドピアノ先生は、なんのために作ったのさっ!?

姫華グランヴィルよ! ピアノは弾かないの! ……ジョゼフ・モーティマー・グランヴィル、19世紀イギリスの医者よ。作ったのは「ペルクトゥール」っていう振動する器具で、狙いは筋肉の痛みをやわらげること。1883年の本では「女性の患者にはまだ一度も使ったことがない」とまで書いてるわ。

舞なーんだ、つまんないのっ! じゃあバイブがおうちに来たのは、もっとずーっと後なんだね!

姫華それが意外と早いのよ。アメリカのハミルトン・ビーチ社の「ニューライフ」バイブは、1902年6月24日の特許の刻印入りで、作られたのは1903年ごろ。いまはスミソニアンの博物館に収められてるわ。

姫華合成皮革のケース入りで、硬いゴムの円盤やボールみたいな付け替えパーツ付き。値段はカタログで1915年に25ドル、1929年に28.50ドル。当時のバイブは、いろんな不調に効く「健康器具」として新聞や雑誌で宣伝されてて、ハミルトン・ビーチは『Health and How to Get It』なんて冊子まで出してたの。

舞健康器具かぁ~っ! じゃあボク、明日から毎朝バイブ持ってラジオ体操するよっ! 姫華さんも一緒にやろっ!

姫華体操には使わないわよ!! 誘わないで!! ……それにね、当時のアメリカ医師会は、こういう振動器具の「治療」にはかなり批判的だったの。効くって宣伝を、そのまま信じちゃダメってことね。

姫華ふふん。「医者がヒステリー治療のために発明した」は、話が刺激的すぎて、誰もちゃんと確かめなかったのかもしれないわね。アンタも、映画で見た話をそのまま信じるのはやめなさい。

姫華のまとめ

  • 「ヴィクトリア朝の医者が、ヒステリー治療で女性患者を絶頂させるためにバイブを使った」という話は、1999年の本『The Technology of Orgasm』から広まった。2018年にリーバーマンとシャッツバーグが同書の資料を確かめたが、その証拠は見つからなかった。
  • 振動する器具「ペルクトゥール」を作った19世紀イギリスの医師グランヴィルは、痛みをやわらげる研究をしていて、1883年の本で「女性の患者にはまだ使ったことがない」と書いている。
  • ハミルトン・ビーチ社の「ニューライフ」バイブは1902年の特許で、1903年ごろの製品。1915年に25ドル、1929年に28.50ドル。当時のバイブは健康器具として宣伝され、アメリカ医師会はその治療に批判的だった。

出典

※一般的な雑学です。医療上の判断が必要なことは医療機関に相談してください。登場人物はすべて成人です。